道南の知内(しりうち)。
一般には、知内牡蠣と知内ニラとマコガレイで知られた地ですが、北海道産木材製品の数少ない貴重な生産地でもありました。
それもミズナラ・タモ・クリ・ニレ・セン・マカバ・シラカバの希少な広葉樹の無垢フローリング専門の木工場があるのです。
その北海道産広葉樹フローリングの生産会社「ウッドファミリー株式会社」を訪問しました。
10年程前までは「岡田木材株式会社」でしたが、その後、木材生産販売の辣腕マネージャーの中上さんプロデュースにより生まれ変わる。
その中上マネージャーもわざわざ仙台からお越しくださり、ご案内していただきました。
また来年、函館に移住を計画している施主ご夫妻をお誘いしまして一緒に訪問しています。

まず案内された事務所にて、生産している北海道産広葉樹のミズナラ・タモ・クリ・ニレ・セン・マカバ・シラカバのカットサンプルを見ながら、岡田社長にそれぞれの木の特徴を説明してもらいました。岡田社長は木をよく知り愛情を持って製品制作に携わっている方なので、木の話は尽きず楽しく興味深い。
画像ではわかりにくいですが、やっぱり木にはそれぞれ個性があって、どれも魅力的です。

敷地内の土間に、整然と高く積まれ原板の桟積みが実に美しい。
人力で丁寧に桟積みしているとのこと。

奥に見える土手の先は津軽海峡です。
常に潮風に晒されて、自然乾燥も塩梅よく。
自然乾燥は数週間から数ヶ月間、原板の含水率が25〜30パーセントになるまで。
この土場に桟積みされている原木は全て、北海道内から集められた広葉樹の板です。
桟積み自然乾燥・スチーム人工乾燥・製材加工を経て、数ヶ月後には出荷される。

仕上がり厚さ15ミリのフローリングの仕入れ原板は、厚さ20数ミリ弱と薄いので、桟積み自然乾燥中に歪まないよう、桟木の間隔が狭くて数が多く配置されているので程よく整った感じがして、この土場は特に美観だと思う。

やはり、ナラ(ミズナラ)のフローリングが根強い人気らしく、ストックしている量が一番多い。

タモ(ヤチダモ)も人気があるフローリング材種。

ニレ(ハルニレ)はエルムと英訳され、特に札幌市内ではエルムと名の付いたモノや場所がたくさんあったり、野山でも街路樹としても北海道内でよく見かけるポピュラーな樹。

ニレは住宅用木材として一般的ではありませんが、家具用木材として私は親しみがある。
ケヤキによく似た杢目の雰囲気があり、実際に本州ではケヤキの代用材として使われていたりする。
私としては、北海道の住宅でもっと使われて欲しいと思っているニレです。北海道を代表する広葉樹と言えますから。

こちらはセン(ハリギリ)の原板。札幌の円山にはハリギリの大木が何本も自生して、天狗のうちわのような形の大きな葉なのですぐに分かる。
木材としては白っぽい木肌で床板としても良材です。
広葉樹フローリングそれぞれの特徴は過去ブログで
→ 北海道産の広葉樹フローリング

この赤レンガ作りの炉は、スチーム人工乾燥に使う水蒸気を作り出すための原始的ボイラー。

木質燃料のみ、原木丸太の皮や規格外のフローリングや端切り材などを焚いている。


木質燃料ボイラーで作られた水蒸気が、この木材乾燥窯にダクトを通して送られてくる。


国鉄(JR)払い下げの鉄道レールを再利用した滑車場は、人工乾燥機からの出し入れと、シーズニングスペースとして使われていた。
含水率15〜18パーセントになるまでスチーム人工乾燥させて、その後数日間シーズニングされた原板が、加工場に運び込まれ加工される。


加工完了した、北海道産クリの無節フローリング。
この後、サンダーがけをして最終仕上げされる。

80年程前の創業当時は、ブナ専門の加工工場だったと岡田社長よりうかがいました。
そういえば、ブナはこの道南地域の極相林として、かつては広く自生していたはずです。
奥尻島のブナ林、松前町大千軒岳山麓、上ノ国町字宮越のブナ林、日和山町のブナ純林などが今も存在しているのがその名残り。
近年、ブナ林は保護されるようになり、ほとんど山から伐り出されなくなった。
どうして道南の知内に、と思っていたのですが、そういうルーツがあったとは。
広葉樹フローリングそれぞれの特徴は過去ブログで
→ 北海道産の広葉樹フローリング