これから新築一戸建ての住宅の設計が始まる、札幌市中央区にある敷地を見に行きました。
沢地形の国有林に隣接し、樹齢100年を超えていそうな大きい樹々がいくつか見られ、住宅地とは思えないプリミティブな所です。
ゴールデンウィーク明けから、建物が配置される辺りの敷地内の樹木伐採を始めるので、その前に再度いろいろと確認を。
道路境界線に積まれた間知石(けんちいし)。

一個一個が四角錐状になっていて地盤側面に喰い込み、その30センチ角程の底面が見えている格好です。
住宅敷地の土留めとして築かれたのではなく、この辺りがまだ耕作地だった頃の名残りなのではないかと。
築後50年は経っていそうな雰囲気。ザックリとした割肌で、まだらに苔生し、形もアバウト。
自然風化と手加工の調和と風合が豊かに醸し出された、なかなか得難いモノに思える。
この敷地のどこかで再利用を予定しています。

この敷地の南東角辺りに自生しているコブシの大木。高さ15メートル程あります。
白い花が咲き始めていました。

伸び伸びと自然な美しい樹形をしていて、とても感じのよいコブシ。
こんな樹が敷地内にある、というだけで私には羨ましく思えます。
国有林の沢斜面を4〜5メートル降りると、少し平に開けているようなので、そこまで行ってみることにしました。

途中、フキノトウの脇でスプリングエフェメラルのエゾエンゴサクが咲いています。
改めて見渡すと、ちらほらと。

沢に降り立って見ると、目をみはりました。

まばらに潅木が立ち、苔生した倒木が所々に横たう、ゆったりと蛇行して細く続く清んだ流れ。
原始の源流部に来たような雰囲気です。
これが、190万人が暮らす大都市札幌の、しかも中央区の住宅地のすぐ裏にある風景なのですから、唖然とします。

浅い淵もあり、イワナやヤマメの稚魚でも潜んでいそう。

流れの傍でオシダがたくさん芽吹いています。
このあたりの礫や砂が多い沢筋に多く自生している大型のシダ。
オシダの葉が広がる頃には、この沢に近づきにくくなります。

エゾリスやキタキツネが、この苔生した倒木の橋を渡って行き来することでしょう。
こんな自然・風景がすぐそばにある。
それだけで、心が安らぎ満たされる気がします。
この場に寄り添って慎ましく佇むような家をご提案できればよいなと、改めて思わされました。