家と草木のアトリエhausgras

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2019年11月6日



円山公園のブナの黄葉


札幌の紅葉も終盤で、至るところで樹々の落ち葉が積もっています。
そんな落ち葉を踏みしめる散歩に、円山公園へ。

円山公園の落ち葉

カツラ・ハリギリ・イタヤカエデ・ヤマザクラ・ハルニレ・ミズナラ・ヤマモミジ。
この辺りではお馴染みの樹々の落ち葉が、一面に敷き詰められています。

この乾いた落ち葉の上をカサカサと音をたてて歩くと、シンプルに楽しい。


秋の札幌円山公園のブナの黄葉に目をとめる

札幌に住んでいると普通には見ることのない葉の黄葉に、ふっと目が留まりました。
Vの字の側脈(葉脈)がハッキリと刻まれ、卵のような綺麗な葉形。

「ブナ」(橅)です。

札幌 円山公園のブナのひこばえ

幹を見ると、樹皮は灰褐色でツルリとしています。
地面から80〜100センチくらい上がったところでヒコバエしているようです。
謂わゆる「あがりこ」でしょうか。この辺の積雪高さに近いので、自然な萌芽更新かもしれません。

ここ、円山の北麓は、明治時代の一時期に、北海道に自生していない国内外の樹々を集めて育て、
北海道の気候に適すか、また有用かどうかを試す育樹園(養樹園)だったそうですから、その時に植えられたブナなのかも。
そうであるならば、このブナの樹齢は120〜140年くらい。

ブナは成長がとてもゆっくりな樹として知られています。
花が咲き実を付けるまで50年(30年とも)、幹の直径が40cmになるのに100年かかるらしい。

札幌市円山公園のブナ 秋の黄葉を見上げてみる

そんなブナの幹の傍から、上を見上げてみる。

札幌 円山公園のブナの黄葉

黄葉したブナの葉を透過して届く、柔らかい秋の光が気持ちよいです。

札幌 円山公園のブナの紅葉を見上げる

円山公園のブナの下を歩く園児と保育士

こうして引いて見てみると、スーッと伸びたスマートな幹とバランスよく広がった樹冠の枝葉。
その周囲の往来を優しく見守っているようでもあります。

「Mother of the forest」(森の母)
「Queen of the forest」(森の女王)

と、ブナ(Beech ビーチ)はヨーロッパで呼ばれていることもうなずける、端正優美な立ち姿です。

円山公園のブナの紅葉とハルニレの黄葉の落ち葉

ブナの落ち葉とカバノキ科アサダの落ち葉。
葉の長さは8センチくらい。
似ていますが、ブナの葉は厚みと艶感があります。
色つきもしっかりとして綺麗に思える。

札幌 円山公園のブナの樹皮

ブナの樹皮は、ランダムな点線が縦目に並んだ薄くて浅い隆起模様があるけれども、ほぼ滑らかで明るい灰白色です。
それゆえ、東北地方のマタギはナタでブナの幹に、山での道標・目印の文字を刻んだらしい。
ブナは成長が遅いこともあって、刻んだ文字が長くそのまま残ることも都合がよかったのだそう。

人だけでなく、ブナの実を好物としているクマの爪痕もクッキリとずっと残ります。

そんな事を知ってかしらずか、このブナの幹にも文字が刻まれていました。
必要性の全く無い、ただの落書きなので残念ですが。

札幌 円山公園のブナの幹

ブナの樹皮に付いた地衣類の白い斑紋。
これは、トドマツの樹皮にもよく見られます。

ブナの葉形・樹形は、雨水を幹と根に集めるようにできているらしい。
雨の日のブナの幹には、雨水が「樹幹流」としてこんこんと流れ落ちる。
それが地衣類コケ類が好む、湿気・養分を供給しているようです。

札幌市円山公園のブナの実殻

ブナの実殻。開かずに落ちてしまっているのが多数です。実入りもほとんど無い。
ブナは5〜7年ごとに、動物が食べ切れない程の多くの実をしっかり付けるという。
それは、採食されない無事な種子をより多く残すため。
どうやら、今年は違うらしい。

本来、この殻が十字に割れ開いて、ソバの実ような三稜形(断面が三角形)の黒い実が2つ付いています。
見た目は蕎麦の実に似て、味は栗のようだから、ブナのことを「ソバグリ」とも言うこともある。


円山公園のヤマモミジの紅葉

しっとりと落ち着いた黄葉のブナの背後では、ヤマモミジが燃えるような色鮮やかさで紅葉していました。



さて、円山公園でブナと落ち葉を楽しんだ後10日足らずで、北海道に本格的な寒波がやってきました。


庭に残っていたチカラシバ、ススキ、アナベル、ハーブの枯れ穂や野バラの赤い実に積もっていく雪。
この後も断続的に降り続き、翌日朝には20センチ程の積雪になりました。

北海道はいよいよ、長くて寒さ厳しい冬が始まります。