カラマツ板トドマツ板が張られて
2020年12月28日
店舗兼住宅の新築工事が進む、中標津の現場。
札幌市の往来自粛の折でもあり、このところ1ヶ月間ほど現場に出向いていません。
現場の日々の進捗は、施主さんと建設会社社長さんに度々撮って送っていただく画像で確認しています。
今回載せているのは、全て施主さんが撮った画像を使わせていただきました。
1階外壁に張られた北海道産カラマツの無垢板。
この製材所帯鋸挽き放しの荒々しく素朴な木地のまま、無塗装のままいきます。
屋根廻りの屋根垂木と破風も、同様にカラマツ材で無塗装。
そして、2階の外壁は細めの板を横張りにして白く塗って仕上げています。
それを意図したわけではありませんが、この外観を見ると店の生業を直感的に思い浮かべられる。
新店舗の懐深い、エントランスポーチ。
高さ2メートル幅2メートルの大きな観音開きの出入口木製ドア。
タモ材に燻煙処理した木材で作られていて、ムラのあるスモーキーな色味になっていますが、これも塗装はしていません。
このままでいく予定です。
無塗装の木材は、干割れ色褪せなど自然風化の影響を受けやすく、その場の状況によってそれは様々で予測できない。
提案する側はしっかりと意図を説明して、それは覚悟のうえ、あるいは自然変化を楽しもう、変化次第でどう対応しよう、
など、施主はもとより、材料を調達して施工やメンテナンスに関わる建設会社ともコンセンサスを得られるかどうか。
素材をあるがまま、自然になりゆくまま。
実現すれば、これほどさっぱりとして気持ちが楽になることはありません。
室内の傾斜天井(屋根勾配と同じ傾斜の天井)には、トドマツ材の小割り板を少し隙間を開けて(目透かし)打ち付けました。
小さい節が散りばめられた模様のように程よくあって、ナチュラルで健康的な爽やかさ。
壁は白い左官塗り仕上げですから、それとの相性がよさそうです。
それに、窓の外のエゾマツやミズナラ・カシワの森の風景との相乗効果も。
実際にこれらを目にする日が楽しみです。
クールな屋根板金の現場
2020年12月3日
中標津の店舗兼住宅の新築工事の現場監理に行ってきました。
今回は、朝8時に新千歳空港発で、午後1時半に中標津空港発の便で、現場滞在は3時間のトンボ返り往復です。
機体はいつものボンバルディア DHC8-Q400。
74席の小さいプロペラ機なので、天候次第で結構揺れます。
飛行高度が低いので、景色はよく見えますが。
そんな飛行機の翼のように伸びる、現場の2階の板金屋根。
クールなグレー色で、冬の澄んだ青空の色を映して爽やかでした。
森の樹々の葉が茂る夏は、濃い緑を映すかな。
北海道産カラマツ材の屋根の破風と垂木の軒先。
この店舗兼住宅の外装木材は全てカラマツ製材帯鋸挽きのまま、屋根周り材と1階外壁板は無塗装で木地のままです。
素材そのままに、この場所の自然と気候による風化で、年々ゆっくりと相応しい風味付けがなされてゆくことでしょう。
そんなクールで純朴な外部とはうってかわり、
天井に厚さ300mのロックウールブローイング断熱材が充填され、
壁には付加断熱を含めて厚さ200mの高性能グラスウールが入った内部の進捗状況。
11月末から朝晩の冷え込みが強まり、早くも−10℃以下になる日も出てきました。
道東 中標津のどんなに厳しく冷え込む日も、ホットとはいかないまでも快適な温かさの室内に。
原生林の息づかいを感じる土地
2020年11月20日
札幌市中央区で土地探しをされている方から、この土地を見て欲しいとご連絡をいただき行ってきました。
人口200万の大都市札幌の生活利便性のよい住宅地に、こんな場所があるのです。
道路と接する前側は盛土されているように見えましたが、その他の部分は本来の地形で傾斜地。
裏側は、沢地形の法肩を含む2段地になっています。
その法肩あたりにそびえる、オヒョウニレとイタヤカエデの巨木。
左奥には立派なキタコブシもあります。
他にも、ヤマザクラ、ヤマモミジ、ミズナラ、ハリギリ、カツラなども。
いくつものヤマブドウの太い幹が伸びて樹々に絡み、地表にはクマザサがびっしりと生茂る。
原生林と繋がっていて、その息づかいを感じられる土地でした。
オヒョウニレの巨木を見上げてみる。
古木感漂い、樹齢100年以上は優にありそう。
アイヌ語では、織物の繊維をとる樹皮を「オピウ」と言うらしく、オヒョウの名はこのオピウからきている。
また、オヒョウの樹をアイヌでは「アッニ」と言い、「アットゥシ」というアイヌの織物の名前の由来になっているのだとか。
こんな土着的な樹々と原初の地形を間近に眺めながら暮らす日々は、
人の気持ちを、よりプリミティブにしてくれるに違いない。
上棟とレンガ積みと植樹
2020年11月4日
新築工事が始まって1ヶ月が過ぎ、中標津の店舗兼住宅が上棟しました。
私が現場に到着した時は、カラマツ材の屋根垂木架けが進んでいるところでした。
そのすぐ傍で、施主ご家族のセルフビルドのレンガ積みも同時進行です。
ご夫妻と娘さん、そしてお母さまも。
手作り食品製造・販売業を営み、現店舗の内装をセルフ工事した方々ですから、作業の要領がよくてしかも上手。
私が想定したよりも速く積み上がっていき、15段430個を2日足らずで積んでしまいました。
建物と少し離れた所に築かれるレンガ壁。
隠したいモノと気づいてもらいたいモノ、両方のためのレンガ壁となります。
上棟したばかりの店舗兼住宅の2階からの眺め。
国道の奥には黄葉真っ盛りのカラマツ防風林。そしてその奥に見える山影は、標高1005メートルの武佐岳(むさだけ)。
かつては「チセネシリ」と呼ばれていたそうで、アイヌの言葉で「家のような形の山」という意味らしい。
確かにチセに似ているような。
レンガ積み作業の合間に、エゾヤマザクラの苗木を数本植えました。
高さ2メートル程の、今はまだか細い苗木。
桜の花見ができるであろう数年後が楽しみです。
この辺りの林はミズナラとカシワそれにシラカバとエゾマツばかりですから、
この敷地内に中標津の在来樹種、エゾヤマザクラ・ハルニレ・イタヤカエデ・ヤマモミジ・コブシ・シナノキ・ナナカマドなど植樹していって、
本来の植生豊かな森に近づけたらよいのではないかと。
私が現場を離れる頃、2階切妻屋根の垂木が架け始められました。
実に優しいフォルムの木の建築です。
人をそっと包み込むような建築、人と建築をそっと包み込むような森、となることでしょう。
窓と木造軸組みの納まり
2020年10月16日
現場では基礎工事が順調に進んでいる、中標津の店舗兼住宅の新築工事。
埋め戻しが済んで、今週末に土間コンクリートが打設されるとのこと。寒さがやってくる前でひと安心です。
来週からは土台敷きが始まる予定。
この間に私は札幌の事務所にて、窓ドアの納まり詳細を手描きしたり、
木造軸組みの寸法・位置・納まりをチェックし続けていました。
「手指を動かしながら考える」というのは、20代に家具工人や大工として働いていた時から変わりません。
検討した結果、窓とドアのいくつかは、サイズ変更して調整することに。
プレカット伏せ図に赤ペンで書き込み。
何度か図面を修正してもらい、お手数をおかけしました。
仕口金物の指定や面剛性などについても合わせて検討しつつ。
今月末か来月初旬に、現場で組み上がった姿が現れます。
中標津の店舗兼住宅が着工
2020年10月7日
中標津の店舗兼住宅の新築工事。
9月下旬に着工して、砕石パイル工法による地盤改良工事はすでに済ませ、現在は基礎工事が進行中です。
中標津町は凍結深度が90センチなので布(コンクリート壁部分)が高い。
鉄筋の間隔を確認します。
かぶり厚さとか賛否両論ありますが、タテ鉄筋の頂部はフック付き。
新店舗と新居を取り巻く森のナラとカシワの葉は、もう黄葉し始めていました。
道東の秋は、一足先にやって来ます。
現場での打ち合わせを済ませた後、基礎工事を見守る建主ご夫妻。
お店がとても忙しそうで、現場をゆっくり見る時間が無さそうでした。
今月下旬に現場で柱と梁組み(建て方)が始まり、今月末には上棟する予定です。
フリー土間とラフ模型
2020年9月28日
札幌市内の33坪角地に建てる家の計画。
何度かプランの打ち合わせ重ねて、玄関土間と繋がった自由に使える土間空間を設けることになりました。
6畳ほどの広さですが、玄関土間との間仕切り引戸を開けると、12畳くらいの広さに見えるのではないでしょうか。
趣味的な使い方をされると思いますが、南東方向の窓辺は観葉植物を育てるのにもよさそう。
来客の応接にも、玄関続きなので都合よいスペースとなるかもしれません。
平面プランの方向性が決まったので、1/100スケールのラフ模型を作成して見ていただきました。
現段階の家の全体像は、模型を見ていただくことでハッキリとお伝えすることができます。
ゆったりとした勾配の切妻屋根の下は、程よい広さのリビングダイニング、プラス畳室の2階空間。
いつものことながら、木構造上重要な役割を担う柱と梁組みをシンボリックに見せます。
年内は図面を描き進めながら、工法・仕様と造作の詳細を詰めていきます。
中標津にて工事契約・設計契約
2020年8月25日
建築吉日の2020年8月25日の午前中、中標津の建設会社事務所にて工事請負契約をしました。
ナラとカシワの森に建つ店舗兼用住宅の工事を請け負ってくださるのは、創業50年の中野建設さんです。
建設予定地の前面道路を挟んで、ちょうど向かいにあるというご縁もあり。
穏やかな雰囲気の社長さん。頼りにしています。
その後、建設予定地へ。
道路から20メートル程入った、この辺りに店舗兼用住宅が建ちます。
見てのとおり、ミズナラとカシワの樹々に囲まれて。
無数にある細いエゾマツは間引いてかなり減らしますから、
森の視界はもっと透き、林床にもっと光が届き、明るい印象になるはず。
新しくできるお店だけではなく、この雑木林にも、訪れるお客さんが親しめれば素敵です。
ちょっとした散策路だとか、森の中のオープンカフェだとか。
それからさらに場所を現店舗に移して、設計監理契約をしていただきました。今更ですが。
ようやく、ここまでたどり着きました。
でも、工事が始まったら、出来上がるのはあっという間。
来春が実に楽しみです。
ナラとカシワの森の中に
2020年8月14日
道東 中標津町でお店を営むご夫妻から、新店舗兼住宅の設計のご相談をいただいて、
その郊外にある、この森を初めて見に行ったのが2017年の8月中旬でしたから、ちょうど3年が経ちました。
根釧台地の整然と矩形に区画された「格子状防風林」に守られた農耕酪農地帯。
その中にあって、自然な状態の一辺として存在している雑木林です。
パッと見でも分かるように、ミズナラとカシワが多くあります。
それは、開拓当初から防風林と薪炭林(薪燃料を生産する林)として維持され活かされていたからでしょう。
ナラやカシワは堅い良材で、人との関わりも深い木。かつては鉄道枕木としても使われていました。
どうやら、枕木の需要が急増した昭和前期に、中標津のナラ・カシワは多くが伐られてしまったらしい。
それ以後に生長した樹々なので、背は高いけれども幹がそれほど太くない。
どれも樹齢は100年に満たない、比較的若々しい森です。
林床は、ミズナラとカシワの落ち葉だらけでフカフカの腐葉土。
そこから新たな樹の芽・草の芽がたくさん芽生えています。
ドングリから力強く根と芽を出すミズナラ。
防風林としての機能する雑木林はしっかり残し、店と住まいの建物スペースと駐車スペースの分だけ整地されました。
林の中が少し暗く見えるのは、後年、密に植えられた細いエゾマツが残っているから。それらは間引いてしまう予定。
その代わり、この地に適したいくつかの在来種の広葉樹を加えていくのがよいと思っています。
白樺やハンノキなどのカンバ類やハルニレ・イタヤカエデ・キタコブシ・エゾヤマザクラ・ナナカマドなどです。
ミズナラとカシワの森の中に建つ、新しい店と住まいのイメージスケッチ。
道路からアプローチして見えてくる瀟洒な外観。
ミズナラとカシワの森を眺められる連続窓のある室内。
新築工事は来月から始まる予定です。
現在、着工に向けて諸準備が着々と進行中。
順調に進めば、来年の春に新店舗オープンとなりそうです。
角地の小住宅のプラン始め
2020年8月10日
札幌市内のとある住宅地。その角地で日当たりのよい33坪の土地。
ここに小さな木の家を建てるべく、先月からプランづくりが始まりました。
接する2つの道路とも歩道付きでそれなりに広く開けているので、ここに新築される家は土地の狭さを感じさせないはず。
家へのご要望をうかがって、まずは最初のラフプラン2案を用意して見ていただきました。
リビングダイニングにつながる畳室があるとよいかもとか、
これから在宅勤務が増えるかもしれないので仕事場コーナーも。
趣味の自転車とキャンプ道具を手入れするための「土間」が欲しいとも。
内土間と外土間(ピロティ)合わせて、12平方メートル(7〜8畳)です。
今のところ、小さい家になりそうなので、それぞれこじんまりと確保しました。