家と草木のアトリエhausgras

唐松の松ぼっくり

カラマツの松ぼっくり 十勝にて

北海道のトドマツとカラマツ

本州の家づくりには「スギ(杉)」と「ヒノキ(檜)」がよく使われていますが、
北海道の家づくりに使われる木は「トドマツ(椴松)」と「カラマツ(落葉松・唐松)」です。
北海道内の人工林のうち95%以上が針葉樹で、その針葉樹内訳はトドマツが約50%、カラマツが約30%。
この2つの樹種が、北海道の気候風土により適応していることを示しています。

「トドマツ」と「カラマツ」は北海道の寒冷な気候に順応するので、道内各地に植林されてきました。
それらの樹々が生長し、現在、北海道の山々に相当量の蓄材があると言われています。
どちらも家の柱や梁など構造木材として、それから外壁板や天井板や床板、下地材としても使われます。

トドマツの密生

札幌市内の自然公園内にあるトドマツの林。
北海道内の自生樹種には、トドマツに似た「エゾマツ」「アカエゾマツ」がありますが、それらとの見分けは簡単です。
枝先が上がっているのがトドマツ。枝先が下がっているのがエゾマツとアカエゾマツ。
こんな覚え言葉もあります。
「天まで届(トド)け」のトドマツ。頑張って上向かなくても、「もうええぞ(エゾ)」のエゾマツ。

トドマツの幹

「トドマツ」は、北海道に古来より自生し、平地山地いたるところで普通に見られる針葉樹。
北海道にはトドマツのアイヌ語「フップ」がつく地名が多くあります。

支笏湖とカヌーと風不死岳

支笏湖の北岸 ポロピナイからカナディアンカヌーで漕ぎ出すと、真正面には悠然と横たう風不死岳(フップシダケ)。

この支笏湖から見える「風不死岳」(フップウシダケ)や阿寒湖畔のフップシ岳は、「フップ ウシ」=「トドマツが多くあるところ」という意味があるそう。
かつてアイヌの人たちは狩猟や採集の際に使う「クチャ」という仮小屋を、どこにでもあり冬も葉が枯れないトドマツを使って建てていたようです。
幹枝を骨組みにして、その外側を葉や樹皮で覆った、雨風をしのげるテントのようなもの。

トドマツの葉に積もる雪

トドマツの立ち姿は本州に自生する「モミ」によく似ていて、北海道ではクリスマスツリーの樹としてお馴染み。
冬でもトドマツの葉は蒼々と繁り、雪の降り積もった姿は特に印象的です。

とど松の板 羽目板

木材としてのトドマツは、杢目は淡く穏やかで木地色は白っぽく、軽くて柔らか。
そして手で触れるとほんのりと温もりを感じます。これは気のせいではありません。
堅くて重い木より柔らかくて軽い木のほうが「熱伝導率」が低いので、触って冷たく感じないのです。

トドマツのフローリングにオスモ塗装

床板は傷つきにくさが優先されることが多く、タモ(アッシュ)やナラ(オーク)などの堅い木がよく選ばれがちだと思いますが、
足触りの柔らかさや温かさで選びたいという方には、トドマツの床板は気に入っていただけるはず。
素足で暮らす日本の床、北海道の床だからこそトドマツの床は活きるのではないでしょうか。

トドマツの厚い床板

11年の時が経った、hausgars事務所兼自宅の北海道トドマツの床板。
この床板は厚さ4.5センチ、幅21センチというサイズで製材してもらいました。
90センチピッチに敷かれた床下地の大引(土台)の上に直接張っているので適度にたわみ、
トドマツ本来の柔らかさと相まって、柔らかさと温かさを感じられる床です。
敢えて製材所の帯ノコ挽きのままで使い、色濃く荒々しさ残る表面。
10年以上の年月、私たちの足で擦られ続け、滑らかさ艶っぽさが出てきて、一層深みのある得がたい表情に。

柔らかいトドマツ板は、早めに風合いが出てくることもよさに挙げられると思います。
角は自然に丸くなり、表面には無数の傷がつきますが、同時にどんどん滑らかさを増しています。

十勝のカラマツ並木

「カラマツ」は信州 長野の軽井沢 八ヶ岳 乗鞍 白馬などの高原避暑地にはシラカバと共に多く自生しています。
私にはそこでの風景の一部として、カラマツが細く真っ直ぐ立ち並んでいる姿を、

カラマツの若葉と黄葉

そして秋には、金色の針のような葉が光ながらハラハラと舞い落ちてくる印象深いシーンが思い出されます。
「カラマツ」は「落葉松」と当て字されることから分かるように、松の仲間では珍しく秋に落葉してしまいます。

からまつの落葉

からまつの林を過ぎて
からまつをしみじみと見き
からまつはさびしかりけり
たびゆくはさびしかりけり

どこかでふとカラマツを見留めると、この北原白秋の「落葉松」の詩を思い浮かべてしまう、侘しさのただよう樹でもあります。

カラマツの松ぼっくり

「カラマツ」は元来、北海道にあった樹ではありません。
北海道のカラマツは、開拓時代に本場 長野県から苗や種子が入手され育てられたものが始まり。
冷涼な気候や痩せ地でもよく生長し、その割に強度が高く耐腐朽性があります。
かつて北海道内にたくさんあった炭坑の坑木や、鉄道の枕木、電柱などに使われる目的で、戦後、多く植えられるようになりました。

カラ松の板

杢目は力強く男性的で、木地の色は芯部が赤味をおびています。トドマツと比べるとより堅くて艶っぽい。
カラマツを見える柱や梁に使うと、暮らす人は頼もしい感じがするのではないでしょうか。

カラマツの無垢材の大黒柱に触れる施主夫妻

十勝産のカラマツを大黒柱にすえた家。建主さんが愛おしそうに手で触れています。

hausgrasでは「カラマツ」にもオイルステインを染み込ませて使います。
オイルステインは黒〜濃茶色の半透明タイプを使うこと多いのですが、そこにカラマツ木地の赤味と杢目がよい透き加減で出てきます。
月日が経って色褪せてくると、益々よい風合いになるだろうと期待しているところ。

カラマツ床板にオスモ塗装

またカラマツは、オイルステインのクリヤー(透明色)でもよい感じになります。
この家は床板、階段、天井板、外壁、柱、梁、全て北海道産のカラマツ材を使い、木地のまま無塗装、あるいはクリヤーオイル塗り。

カラマツ材のクリヤー塗装仕上げ

よく散歩している札幌 円山公園にあるカラマツ林が、北海道で最古(最初)かもしれないと最近知りました。
「カラマツの来た道」ー北海道カラマツ100年の歩みー (著者 坂東忠明)という本に書かれています。
感慨深くて、短い動画を作ってみました。




北海道の木「トドマツ」と「カラマツ」。
家と草木のアトリエ hausgrasでは、積極的に家づくりの木材として使っていきます。

「 トドマツとカラマツ 」関連ページ