
中庭に面し、この家の中心に階段があります。
階段は家族が毎日何度も行き来する大事な場所。
中庭に正対する階段の凹みにイージーチェアを置いてみる。


階段の踏み板、蹴込み板ともに北海道産の道南杉の厚い無垢板を張っています。
1段の高さは18センチ程なので、子供でもこの階段を上がるのは比較的楽でしょう。

階段の踏み板の表面には「ウヅクリ」加工を施しています。
「ウヅクリ」(浮造)は昔ながらの木の仕上げ方法で、木の表面をワイヤーブラシなどで擦るように削ると、
春から夏にかけて急成長して出来た軟らかい部分(春目・夏目)は削れ、
秋から冬の間にゆっくり成長して緻密に堅くなった部分(冬目)は残って浮き出る。
この表面にできる程よい凹凸が、階段を昇り降りる時に「滑り止め」の効果を発揮してくれるのです。
スギは特に夏目部分が軟らかいので、ウズクリし易い。

階段の手すりには、いつも鉄丸鋼(ソリッドな鉄棒)を使っています。
中が空洞の鉄パイプは使いたくない。
中が空洞の鉄のパイプと比較して、中まで鉄で充たされている丸鋼は、比重が重くてたわみやすいので、
手すり全体の形状と連続性、支点の位置や数、その固定の仕方を工夫する必要があります。
それがまた面白みでもある。

階段と鉄の手すりと中庭の関わり。
階段を降りていくと、必ず中庭の様子が目に入ります。
これから植えられて育っていくであろう、この中庭の草木花や雨や雪を眺めて、季節の移ろいを感じる暮らし。

鉄製(鉄丸鋼)の階段手すりの「曲げ」と「溶接」の部分。
鉄丸鋼の通常の流通長さは5〜6メートルなので、どこかに必ず現場溶接する箇所が出てきます。
溶接ではなくて曲げで連続させたい要所もあるので、そういう所はこだわって、詳細図を描き細かく注文をしています。

1階の階段始まりから、2階の吹き抜けまで10数メートル連続する鉄の階段手すり。


この鉄の手すりは、塗装をかけて仕上げていません。黒皮(くろかわ)素地仕上げです。
丸鋼を製造する際に高温になった鉄は、冷えていく際に表面が酸化して黒い酸化被膜(黒皮)ができます。
この黒皮を削らないように加工すれば、赤錆びが出にくい状態を維持することができます。

階段の漆喰塗り壁に付けた、白磁(ガイシ)のランプソケットとエジソンランプを組み合わせた照明。
その照明が灯された階段と鉄の手すり。


2階の吹き抜けから、階段と鉄の階段手すりを見下ろす。
位置・アングルが変わると、いろんな見え方になる階段と鉄の手すり。
