家と草木のアトリエhausgras

高山の古い長屋の町家(民家)の再生工事 中塗りをする左官職人

「 飛騨高山の古い町家 」の再生工事 中塗りをする左官

飛騨高山の古い町家の再生4
ー 再生の過程をさかのぼる ー

飛騨 高山の江名子川沿いに明治8年(1875年)に建てられ、当時の姿残る築150年の古い長屋の町家。
地元 飛騨の木・土・石と職人の手仕事でこの古い町家を再生させた過程の、いくつかの場面に立ち会う。
昔の仕事の面影と、今もまだ続く実直な仕事と職人の有り様が、この町の歴史と独自性を紡いでいる。

中塗りが塗りあがった2階の壁 古民家古い町家の再生工事改修工事

土壁の中塗りが仕上がった2階の真壁。
塗ったばかりでまだ水分が多く含まれていて、土の色が濃い。

再生工事中の古民家古町家の荒壁と中塗り壁と格子

荒壁(荒塗り壁)と、塗りあがった中塗り壁に欄間格子から光が射す。

荒塗り土に被っていく中塗り土

荒塗り土に被っていく、中塗り土。
中塗り土には、砂と藁スサが多く混ざっていることが分かります。

荒塗りには、下地の小舞(こまい)に食い込ませるように荒土(粗土)を塗り着けて一体化させ、壁としての強度を生む役割、
中塗りには、干割れなどで粗く凸凹している荒壁の表面を平滑に均して、仕上げの漆喰塗りとの馴染みをよくする役割がある。

荒壁(荒土壁)に中塗りをする左官職人

広めの真壁の荒塗り壁に中塗り土を被せていく左官屋さん。

古い壁面がかなり歪んでいるので、時々、定規をあてて塗り厚さを調整しながら進めています。

定規をあてて中塗りの塗り厚さを調整していく左官職人

中塗りが済んだ床の間の壁

中塗りが完了した床の間の壁。

荒壁の上に中塗りをする左官

床の間の荒壁の上に中塗りをかける左官屋さん。

荒壁塗りの床の間の壁

荒壁塗りの床の間の壁。
土壁の表面全体に乾燥収縮による干割れが出ています。
ギザギザの切れ目は、大きな割れ(クラック)を防ぐために、左官屋さんが予めコテで切っておいた跡。

中塗り用の土に藁スサを混ぜる

中塗り用の土に、さらに藁スサを混ぜます。

中塗り土 良質な粘土と砂

仕上げの漆喰塗りをする前に、壁の下地調整をする「中塗り」をします。これはその中塗り用土。
良質な粘土と砂を混ぜ合わせたものです。



引き違い戸の鍵穴を掘る建具職人

引き違い格子戸の鍵穴を掘る建具屋さん。

古民家古町家の座敷の引き違い格子戸と障子を建て込む

2階座敷の引き違い格子戸と障子の建て込み。

玄関の高山格子の引き違いガラス戸を建て込む建具屋さん。

古民家古町家の玄関の引き違い格子戸を建て込む


石頭(セットウ)とコヤスケで石の角をはつる角落とし

石頭(セットウ)とコヤスケを使って石の角をはつる(叩き割る)石屋さん。

厚い石版の表面をエアーハンマーを使って小叩き。
彫り深い表情になっていく地元 飛騨産の溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)。

エアーハンマーで石の表面をはつる荒らす


再生古民家古町家の大黒柱と四方差しの梁組み 柱はヒノキで梁はヒメコマツ

再生工事で追加した2階の大黒柱と四方差しの梁組み。大黒柱はヒノキで、梁はヒメコマツ(姫小松)。
ヒメコマツは五葉松の別名で、飛騨地方の家々の梁に使われています。

ロフトの床梁もヒメコマツ。

再生古民家のヒメコマツ(五葉松)の梁組み
古民家古町家の干割れた荒壁と黒く煤けた土壁黒く煤けた柱

干割れた荒土壁と藁スサが浮かぶ真っ黒に煤けた土壁。
昔はこの荒壁のまま、暮らしを営んでいたようです。

荒土壁の干割れと藁スサと黒く煤けた土壁
古民家古町家の煤けて黒い土壁と通し抜き真壁

黒く煤けた壁が、元々のこの長屋の形。
明治初期に建築された当初は、切妻屋根だったようです。

竹と葦(茅)小舞下地の荒壁土壁と通し抜き真壁の古民家古町家

隣家との界壁。明治初期の建築当時のままの小舞(コマイ)壁下地です。
葦(ヨシ・アシ)茅(カヤ)を数本ずつ束ねて、所々を稲藁で結い、網目状に編まれています。
また、1尺くらい間隔で割竹で補強もされている、竹と葦(茅)の小舞。


飛騨高山の古民家古町家の明治時代初期の土壁と平成の補修の模様

1階の荒土壁は明治初期のままですが、土台上など傷みがある箇所は新たな土で補修してもらいました。
ギザギザとコテで切った跡のある土がその部分です。

馬の形に見える大きめの干割れのある土補修部分は、今回のものでは有りません。何十年か前に補修されたのでしょう。

飛騨高山の古民家古い長屋の明治時代初期の土壁の模様と平成の補修の模様
古民家の床組みの古い敷石が出てくる

畳の下地となる荒床板を撤去したところ、床組の敷石が出てきました。
この石は全て、川辺に新たにつくった石畳の庭に使いました。

古民家古町家の土台基礎 石場建て 古い紙が貼られた古い壁

壁の最下部 土台は束立てしないで、並べられた石の上に直接据えられた石場建て。
石は硬くて角が丸い。河原石を使っているようです。
古い壁に貼られたカレンダーや風景画や年表が時代を感じる。

再生工事前の古民家古町家の2階から階段下を見る

2階から階段下の方を見下ろす。

古民家古町家の再生工事(改修工事)前の1階建具1

再生工事が始まる前の1階。全の部屋が、引き違い戸で間仕切られています。

煤けて黒い2階床梁組みと、畳敷きの粗床板張り。

古民家古町家の再生工事(改修工事)前の1階建具2

再生工事(改修工事)前の古い町家(古民家)を江名子川越しに見る外観1

江名古川越しに、再生工事前の古い町家(古民家)の姿。
増改築を繰り返したようで、護岸の石積みの直上に家の壁が載っています。

再生工事(改修工事)前の古い町家(古民家)を江名子川越しに見る外観2

再生工事(改修工事)をする前の飛騨高山鉄砲町の古い町家(古民家)の正面外観

町並みの道路側から、再生工事前の古い町家(古民家)の正面。

再生工事(改修工事)をする前の高山市鉄砲町の古い町家(古民家)の外観正面

この町家の再生工事に関わっていただいた工事業者は、

大工 安藤建築(下岡本町)
製材 丸弘木材(新宮町)
左官 北川左官(大新町)
建具 谷本建具(松之木町)
石工 岩滝石材(滝町)
製畳 桑畳店(川原町)
解体 高原建機(鉄砲町)

皆さん地元 飛騨高山市の方々です。感謝。