白老町にある周囲4キロ程の小さい湖、ポロト湖。
春から秋にかけては賑わうこの湖も、日中の気温が10℃を下回る11月半ばにもなれば、ほとんど人気(ひとけ)がありません。
湖畔の樹々もほとんどが葉を落とし、幹と枝だけになっています。
でもそのせいか、ポロト湖がいつもより広く大きく見えます。
静かな湖面を波立てないように、そっとパドルを入れて漕ぎゆっくりと進める。
そして、この日は少し気温が高めで、朝霧が立ちこめていました。
静寂で幻想的な風景の中、しばらく漕ぐのを止めて漂います。
ポロト湖の東岸に生えているハンノキ。倒れかけていて、湖面ギリギリまで枝が下がっています。
樹のシルエットが濃く印象的で、版画や切絵のよう。
岸辺から大きく跳ね出したミズナラの枝。
まだ少し枯れ葉を付けていたので、その葉形からミズナラだと分かります。
このミズナラのアーチをカヌーでくぐって行きました。
こんどは朽ち果てそうな樹の下を。
朽ちたハンノキの幹にサルノコシカケがたくさん付いていました。
ポロト湖の北岸は、葦原(あしはら)が広がっています。
ポロト湖に注ぐウツナイ川流域の湿原地帯。
枯れた葦原のこの色合いと佇まいも、この時期ならではの風景です。
水面を浮遊する純白の羽毛。
この葦原のどこかに、水鳥の巣があるのでしょうか。
秋のよい雰囲気に味をしめて、次の週末もポロト湖へ。
この日は小春日和で、澄んだ空気と青空も。
そして、やはり人気(ひとけ)の無い静かなポロト湖にカヌーを浮かべて悠々と。
北岸の葦(あし)の枯れ野に上陸してみました。
葦を掻き分けないと進めないだろう、と思っていたら、
エゾシカが通ってできたらしい獣道が、縦横に走っていました。
水辺の葦原は、身を隠すにも具合よくて、いろいろな生き物の拠り所になっているのでしょう。
岸際の日陰で浅いところは、もう厚い氷が張っていました。
あとひと月余り経つと湖全体が凍って、ワカサギ釣り場やスケートリンクになるポロト湖。
その頃は、また人の賑わいが戻ってきます。
葦原を離れていくと、シロサギの群れが葦原に屯していました。
写真に撮ろうと近寄ろうとすると、警戒心が強くてすぐに飛び退いてしまいます。
先週、湖面に浮いていた純白の羽毛は、このシロサギの羽でした。
鏡のように青い空と白い雲を写すポロト湖の水面。
写真集で見た、北欧の湖水地方のワンシーンのようです。
他に乱すものの無い湖面に、パドルの波紋だけが広がります。
自ずと、音を立てないよう静かにそっと漕ぐようになっていました。
西岸水際のヒメジョオンの綿毛かな。
一面の枯草の色と水の色と空の色と、この静けさ。
その中で見つけられるもの。
どの季節もそれぞれによい風景があります。