家と草木のアトリエhausgras

木のこと

私は20代の数年間、木の家具づくりや木造伝統工法の家づくりの工人(大工)をしていたことがありますが、
カンナやノミ、ノコギリなどの手工具で、無垢の木を削ったり切ったりしているときに覚える満ち足りた気持ちは、
日本人と木と道具と手仕事(加工技術)の、長くて深い親密な関わりの歴史と文化、それに本来の相性のよさからくるものだと思われます。

木の家や木の家具を使って暮らしている方にも、同じような満足感があるのではないでしょうか。
なめらな木目や木地、自然な色合いと香り、堅さと手触りの程よさ温かさ。
そして時間を経ると味わい深く古びていく様。
ときには傷つきもしますが、それは過ごした日々の記しでもあり愛着になっていきます。

近くの林にいけば、トドマツ、エゾマツ、カラマツなど柱や梁に使われる木、
カツラ、ミズナラ、イタヤカエデ、ヤチダモ、ハリギリ(セン)、クルミ、カバなど家具や床板に使われる木。
身近にある木が素材になっていることを直に感じることができます。
そして樹種によって個体によって立木の姿は違いがあり、それが素材になっても木目や木地色、堅さ柔らかさ、クセは千差万別であると思い至ります。
ひとつひとつ違う木が組み上げられ、形づくられている様子はいつまでも見飽きません。

ノミとカンナと玄翁 手工具でミニテーブルの脚を削りだす

本当に木には、他の素材では得られない代えがたい魅力があります。

しかし、hausgrasの手掛ける家にふんだんに使う無垢の木(ラミナ接着等していない、丸太を製材したままの本当の木材)は、
家の柱や梁や天井板、床板になって、暮らしが始まってからも動きがあり、伸び、縮み、割れ、反り、ねじれがつきものです。
10センチの幅の板を使えば、1センチ伸び縮みがあると思ってください。
できるだけ支障がないように工夫して使いますが、木の動きを止めようとすればする程、木の持つ本来の魅力が失われてしまうので程々にしています。

木の性質を大らかな気持ちで受け入れていただけない方には、木を使うことはおすすめできませんが、
もしかしたら、木を使うからこそ大らかな気持ちでいられ、真の安らぎある暮らしにつながるのかもしれません。

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