家と草木のアトリエhausgras

庭から広がる

ここは宅地造成されてから50年以上経っている古い住宅地で、しかも私が手にした土地は、その間、一度も家が建ったことがなくずっと更地のままだったそうです。
元のオーナーさんが毎年草刈りをしていたそうですから樹はありませんが、50年間のうちに自然と幾種類かの草が生えて、小さな草原のようになっていました。
聞くところ、それよりも前は北海道神宮の御料牧場(御料地)であったとか。

背の高い草があるので普段は見えない草に、野いちご(ワイルドストロベリー)、フウロソウ、カタバミ、ハコベ、スズメノカタビラなど、感じのよいものがあったので、それらは庭に残して育てています。

「野いちご」には、北海道にもともと自生していた「エゾクサイチゴ」と、外来種の「エゾヘビイチゴ」(ワイルドストロベリー)というとてもよく似た2種があること。
「フウロソウ」や「カタバミ」は自ら種を遠くに飛ばす仕組みを持っているので、早く広く繁殖しやすいこと。
「ハコベ」は家の建築に使ったセメントでアルカリ性が強まった土にも適応できること。

育てようとすると、その草のことを観察して調べるようになり、興味がいっそう広がっていきます。

赤レンガ積みの壁とワイルドストロベリーの実

そして、庭をつくり始めて数年が経った今、
道路との境につくった石積みとその隙間に植えた野いちごのオープンガーデンは、
5月には小さく白い花を一面に咲かせ、6〜7月には甘酸っぱい香りを漂わせる真っ赤な小粒のイチゴをたくさん実らせます。
思ったとおり、そんな様子を行き交う人たちも楽しみにしているようです。
中にはこの小イチゴを一つ二つ摘んで、その場で頬張っていく人も。

「いつも見ている、あの感じのよい庭を真似してみたい」

そんな風に、人を通して自然に広がっていく可能性を思い馳せながら、
そこにもともと根付いている、あるいはしっかり根付きそうな草木や石を選び、
多くの人にそのよさが伝わり、受け入れてもらえる庭づくりをしていきたいと思っています。

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