2階の吹き抜けの木製手摺越しに見える、1階のダイニングの様子。
階高さを抑えていることもあり、より近くに感じられます。
また、2階の個室の壁に設けたガラス小窓からダイニングを見下ろしてみると、さらに間近に思えます。
隔てることなく、家族の存在をいつも近くに感じることができる、1階と2階のこの距離感。
広すぎる家では体感できない、よりよい親密さのある家なのです。
それはまた、目が行き届く、手が行き届く、ということでもあります。
この家は、北海道の道南地方で育った道南杉(どうなんすぎ)を、至る所に使いました。
見えている柱と梁は全て杉の無垢材です。(大黒柱は4.5寸角、長さ4メートルを超える通し柱)
勾配天井は杉の無垢の羽目板材を張り、床は厚さ3.8センチ幅18.5センチの厚い杉板を張りました。
室内は無塗装で木地のままなので(床板のみオスモ エキストラクリヤー塗り)、
素朴な杢目と節、ナチュラルな明るさと色合い、そして杉独特の優しい香りに満ちています。
また、外壁に張った墨黒色の荒い杉板の野趣なシブさに対して、
室内の健康的な木の生成り色と漆喰の白色の明るさのギャップが、この家の魅力のひとつ。
製材したての杉は、赤味と白味の色差があって当初は目立ちますが、次第に日焼けして褐色に落ち着いていく。
そんな風に、人と一緒に年月を重ねていく感じがするのもよいところでしょう。
それから、無垢の木を木地のまま使うと、暮らしでできる木の傷や汚れが目立ちにくく気になりません。
動物を飼っている場合や外の土埃などが室内に入りやすい暮らしの場合は、特にオススメしたいです。
2匹の飼い猫たちは、新しい家に違和感を感じることなく馴染んでくれたようです。
このチャトラは私に対しては、相変わらず警戒していますが。
田園の緑がその先にずっと広がるウッドデッキと繋がっているリビング。
ソファにて猫とくつろぐ。
2階の吹き抜けから、リビングを見下ろしてみる。
今は一人掛けのイージーチェアが置かれているコーナーは、将来、薪ストーブを置く予定の場所。
その直上の屋根には、煙突を設置するための下準備がなされています。
ダイニングテーブルの方を見下ろしてみる。
このL字に配置した南側の窓から羊蹄山が、西側の窓からニセコアンヌプリが望めます。
関東の実家へ帰省された際に買い付けたという、デンマークのビンテージのダイニングテーブルとダイニングチェア。
このスクエアテーブルは、一見は小振りなのですが、エクステンションで10人掛けのロングテーブルになるタイプで、
新居のお披露目で大勢の方が集まった時は、早速、大活躍したそうです。
チークの特有の赤みのある色が綺麗に出ていて、青いガラスの器もよく映えていました。
ダイニングチェアのファブリックシートのマスタードカラーも、なかなか素敵な色です。
これからリビングソファも新調するとのこと。
家具・インテリアを少しずつ加えていく楽しみ、巡っていく季節の風景を窓から眺めて過ごす楽しみ。
そして、年月が過ぎて自然に深まっていく味わいと愛着を、ゆっくりと楽しめる家になるでしょう。
キッチン周りに置いてある品々は、自然素材や手作りのモノばかりで、木製の造作キッチンとよく馴染んでいます。
よく使うラタン(藤蔓)の収納バスケットは、ダイニングテーブルから使いやすいここに収めたいと要望がありました。
椹(さわら)に銅輪のおひつ。土鍋に竹籠。
鉄瓶と銅と真鍮のハリオ コーヒードリッパーなど。
素材にこだわっている所は、他にもあります。
この角型手洗いボウルは銅製、P型排水トラップも銅製。壁付の水栓は真鍮製です。
銅や真鍮には高い抗菌性・殺菌性があるので、農作業の合間にも使うこの手洗いには最適の素材。
ちなみに、ロールペーパーホルダー、タオル掛け(メッキ)、収納棚の扉のツマミ、引戸の引手も真鍮製という徹底ぶり。
銅や真鍮は経年変化も、深みが増して行くので楽しみです。
建主さんの古い家で使われていたアンティークガラスをいくつか、新居の引戸・扉の明かり取りガラス小窓で再利用。
この引戸には、夜空に煌く星がモチーフのランダムに十字が入った柄のガラスを選びました。
シンプルで涼しげで、浴衣の十字絣(じゅうじがすり)のような日本の伝統的な柄でもあります。
2階の個室の小窓には、縦縞のモールガラスを使っています。
2階フリールームは、山型の勾配天井が低めに見えて、屋根裏部屋的な雰囲気。
この空間と1階のリビングダイニングがより一体的になるように、
吹き抜けには透け感のある縦格子の木製手すりを選択しました。
鉄の手すりと杉板張りの床と階段。
玄関にある木製キャビネットの上には、半円形の藤蔓編み籠にドライフラワーが盛られていました。
自宅敷地内で摘んできたヒマワリ・ワレモコウ・セリ科のノラニンジンのようです。
玄関土間のレンガ敷き、真鍮に乳白ガラスシェードランプ、引戸に嵌め込まれたレトロな柄のガラス、と素材調和がある。
新しい家なのに懐かしく親しみある雰囲気がそこかしこに散りばめられています。
オーナーご夫妻によるセルフビルドのレンガ敷きも完成していました。
玄関内土間のレンガ敷き。レンガは江別 野幌のレンガ工場で直に買い付けされたもの。
この家の完成・引き渡しは5月でしたが、稲苗づくり・田植えの農繁期が落ち着いた、6月末からマイペースで進められて。
玄関ポーチのレンガ敷きは、黒色墨色の板壁やモルタル・砕石に囲まれて、レンガの赤が活きています。
セルフビルドならではの手づくりの味わいが出ていて、やっぱりよい感じの仕上がり。
ここに収穫した農作物が無造作に置かれていても絵になりそうです。
川辺に茂る野性味のあるイタドリの濃い緑と、赤い板金の屋根。
広々とした農地に建っているので、より小ぢんまりと見えて好印象ですし、
角度のあるスッとした切妻フォルムは格好よく、黒い板張り壁もその間で効いています。
川向こうにある農地から橋を渡って、オーナーが家に戻ってくるところ。
傍にある軽トラやビニールハウスや農業資材の存在も、飾らない有りのままで美しく思えます。
どこまでも続く広い田園農地の、作物や野草が茂り緑濃い季節も、白銀の雪が深く積もる季節も、
パッと目にとまるランドマークとなるであろう、この凛とした佇まいの、赤い屋根と黒い板張りの家。
それを背景に、牧草カモガヤ(オーチャードグラス)の穂がのどかに揺れる、まさに田園的牧歌的風景です。
窓に写り込んでいる、羊蹄山(ようていざん)のたおやかな裾野の緑もよい感じ。