外国人観光客で混雑する前の京都です。
7月上旬の早朝、祇園の白川沿いをぶらっと歩いてみました。
白川に架かる新橋から。
枝垂れ柳の緑がよい感じです。
川辺の窓の庇には、簾が掛かっていて涼しげ。
この建物は、元お茶屋さんのようです。
この時期、新橋の付近でマガモが子育てをしていました。
5羽の大きく育った子どもを連れて。泳ぎの練習には丁度よい流れです。
アオサギもピッタリついて歩いていく、なんとものどかで微笑ましい憩いの光景。
京都御所から見て南東(辰巳)方向にある「辰巳大明神」。
この祇園のお稲荷さんは、芸事の上達を願う祇園の舞妓さん芸妓さんや商売繁盛を願う地元の商店から厚く信仰されているそう。
辰巳稲荷の傍に架かる幅3メートル足らずの小さい「巽橋」。
ここは、かなり人気の撮影スポットです。さすがに早朝は人が居ないですが。
黒ずんで古びた雰囲気を醸していたこの欄干は、2019年1月に架け替えられてしまいました。
現在はヒノキの白木の新しさが、ちょっと浮いているようで残念。
巽橋から真っ直ぐ南に伸びている「切り通し」。
突き当たりに微かに見えるのは、四条通の商店街のシャッターです。
かにかくに碑の対岸辺りに、古そうでもありモダンでもあるお店が。高級ステーキ屋さんらしい。
この開放的な窓辺に座って、白川のせせらぎを間近に眺めながらなら、何でも美味しく感じてしまいそうです。
枝垂れ桜の葉と白川の流れに縁取られる窓辺。
京都市が「祇園新橋伝統的建造物群保存地区」に指定しているからでもあるのでしょうけれど、
古くから在る建物も新しく出来た建物も、この場の雰囲気を守り続けようとしている。
それはとても好ましく思え、大いに共感できることです。
白川に専用の小橋が架かる、この料理旅館も元お茶屋の建物です。
川辺の草木のしっとりとした緑の縁取りと、軒を連ねる京町屋の窓辺の風景。
夕方、また来てみました。
明かりが灯され、窓辺から漏れ、人影が増えてきました。
白川の川端ではありませんが、白川南通に建つ割烹料理店もよい雰囲気でした。
翌朝、祇園さん(祇園社)の南楼門から下河原通を下ってみました。
四条通と東大路通に面した西楼門が絢爛で目立っていますが、こちらが八坂神社の正門です。
八坂神社の南楼門から、下河原通を200メートル程下った所にある7階建マンションの南側に、
かなり気付きにくいですが、石塀小路(いしべこうじ)の入口がありました。
手前は、人家の下を潜っていく細いトンネル状の路地になっていて、
一列に並べられた石と板塀が、その奥も、緩く昇るように続いています。
この細い石門の辺りから、石積みの塀と古い御影石の石畳の小径が始まる。
ちなみに石門のように見えるのは、水道管の橋(渡し)のようです。
保存されるべき石畳と石塀に影響しないよう、各戸への水道管が多数露出していました。
他にも規制や決まり事があるのでしょうから、いろいろとご苦労がありそうです。
その水道管を、竹の細枝を束ねて巻いて隠している所も。
袋小路になっている所もいくつかあります。
石塀の隙間にはえる井の許草(イノモトソウ)。シダの仲間です。
石と苔や葉の緑は、お互いを活かす組み合わせ。
石と水も同じく。
石塀小路や白川沿いの道、二年坂・産寧坂などに敷かれている御影石は、
1895年から1978年まであった、京都市の路面電車の軌道用敷石を移設再利用したもの。
当時の手加工による歪みや仕上げのムラや形のアバウトさがあって、見た目の揺らぎとおおらかな雰囲気が醸し出されている。
現代の均一的加工では到底のぞみ得ない、とても味のある石畳なのです。
この御影石の産地は、本場の六甲山地のものだろうか。
そして突如現れる、石垣の上の赤煉瓦積みの塀。
レンガそのものは、よく焼き締まった良質のモノのように見えます。
石と赤レンガと藪椿の力強い組み合わせ。
どうやら、この赤レンガ塀は大正時代に高台寺の敷地境界を明示させる目的で築かれたようです。
その赤レンガ塀の途中に、これまた雰囲気のよい露地が伸びていました。
御影石の小石を丹念に敷き詰めた「霰こぼし」(あられこぼし)の小径。
苔生す土と竹垣もよい感じです。
レンガの塀を通り過ぎて、南の筋へ。
グレーの石と濃い緑だけに囲まれて歩く。
どこかの城郭に紛れ込んだような気分になってきました。
かつてこの辺りは、近くの川が増水氾濫することが度々あったそうで、
その対処として、石積みを築いてその上に各戸が建てられているらしい。
そう言えば何だか、城郭の空堀(からぼり)を歩いているような感じもします。
この辺りからさらに南東方向へ歩いて行くと、ねねの道(高台寺通)に通り抜けができる。
その間の50メートル程は、石畳と端正な板塀が続きます。
板塀に挟まれた小径は、ゆるい角度で2箇所くの字に曲がっているのが奥行感を生み、引き込まれていく感じが絶妙です。
何度も行ったり来たりしてしまいました。
ここは特に、質実で端麗で複雑で奥ゆかしい。
板塀をよく見ると、無節の杉板に、柔らかい夏目を削って堅い冬目を浮き出す「浮造り」を施したうえに、
柿渋を塗って仕上げてあるように見えます。ベンガラも少し混ぜてあるかもしれません。
その板を「替折釘」(かいおれくぎ)という和釘で丁寧に留めてある。
板塀の前の植え込まれている砥草(とくさ)とシダと孟宗竹の垣根。
板塀をより活かす、素晴らしいアレンジに思えました。
京懐石のお店の入り口に見えた、シダはイヌワラビかな、それから龍の髭と苔と石の渋い坪庭。
石塀小路を離れ、さらに南に下って歩いて行きます。
平日の朝の二寧坂(二年坂)。
日中は人混みでゆっくり撮れない感じなのですが、人が居ないとやっぱり寂しいです。
そして、産寧坂(三年坂)からの眺め。
朝食前の散歩がすっかり長くなってしまいました。
でもお陰で祇園白川と東山の、夏のしっとりと静かな町の風情に浸れました。